トマトは果物か野菜か″という議論は、一般的によくされてきたように思います。 結論としては、野菜ということで落ち着いているようです。
トマトは見た目には、リンゴやサクランボのように赤くて、パックにきれいに並べられたミニトマトなどは、高級な大粒のサクランボと見間違うようです。 トマトを丸ごとガブリとやると、リンゴやナシにかぶりついたときのように、果物を食べているんだなあ″という気になる。
私など農家に生まれ育ったものとしては、子供のときから裏の畑のトマトをもいで、ザーっと井戸水で洗い、おやつとしてかぶりついて食べたものです。 冷やしトマトとして食卓にも上り(のぼり)ましたが、おかずとしてよりも、食間のフルーツ、せいぜい箸休めのイメージの方が強かったように思います。
ただ、トマトが果物かといわれると、大いに違和感があります。 なぜなら、トマトはキュウリやナスビと同じで、小さな苗から育てて実が採れなくなると枯れてしまうからです。 トマトはキュウリやナスビと同じ畑で作った野菜です。
では、イチゴはどうでしょうか。 イチゴはトマトのように、私たちにはとても身近な食べ物です。 みなさんにとって、イチゴは果物ですか、それとも野菜ですか。
私はイチゴもやはり、トマトと同じように果物として食べています。 でも、トマトが冷やしトマトとして他のおかずといっしょに並ぶことはあっても、イチゴがそんなふうに食膳に置かれることは絶対(殆ど?)にありません。 仮にそうだとしても、食後のフルーツとしてでしょう。
当然ながら、イチゴも裏の畑でトマト同様に作られていました。 だから、農家の子としては断固として野菜といわなくてはなりません。 ところが、食べるときの意識としては、甘いイチゴが野菜というには疑問を持たざるを得ません。 だからといって、イチゴもトマト同様でリンゴやナシのように木にはなりません。
果たして、イチゴは果物か野菜か。 この疑問(不安)に明確に答えてくれる、新聞の切り抜きがあります。 『福井新聞』2019.9.16付の、コラム「果物トリビア」がそれです。
「果物トリビア」=@= 野菜との違いは何? 千葉大助教・三輪正幸
「イチゴは果物、それとも野菜?」という会話をよく耳にします。 果物と野菜の定義とはなんでしょうか? 結論から言うと、果物や野菜を扱う立場によって、定義が大きく異なります。 果物屋さんや八百屋さんなどで果物を販売している立場の人や消費者は「甘くてデザートとして食べる果実」を果物として見ています。 そして、「甘みが少なく、おかずとして食べる果実」を野菜と認識しています。 つまりこの定義を当てはめると、甘くてデザートとして食べることが多いイチゴは果物、ということになります。 一方、果物や野菜を栽培する農家や研究者の定義は違います。 果物がなる植物(果樹)を「木になる果実」と定めているのに対して、「草に結実する果実」を野菜としています。 つまり、木に結実するか、草に結実するかで区別しているのです。 これを当てはめると、草になるイチゴは野菜になります。 同じく甘いメロンやスイカについても、草になるので野菜として扱っているのです。 冒頭の問いには、「イチゴは果物でもあり、野菜でもある」というのが正しい答えになります。 この問題について誰もが納得する形で決着するのはとても難しいのです。 これから果物に関するさまざまなトリビアを紹介していきましょう。 × × × みわ・まさゆき 1981年4月、岐阜県関ヶ原町生まれ。 千葉大環境健康フィールド科学センター助教。 専門は果樹園芸学、システムデザイン学。
2020.5.30
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