先々日、福井新聞文化センターの文芸講座「続 気ままにエッセイを〜大人の文芸部〜」の受講を終えた。 7月16日から毎月第3水曜日、10時30分から12時まで、5回シリーズだった。
講師は元国語教師の向井清和先生、とても熱心で誠実な方だ。 毎回準備されるパワーポイントは、情緒的にならず理論的でその構成に隙がない。 だからといって難しさを感じさせず解りやすい。 さすが元国語教師と得心した次第である。
毎回課題が出され400字のエッセイを提出するが、丁寧な講評と添削がなされ、ありがたく思うと共に大変勉強になった。 解りやすい理論と実践的な講評と添削、自分にとって完璧なものとして、手応えのある充実した5回の講座だった。
次のエッセイは最終回の成果物である。 是非、読んでいただきたい。
「心ふるえたとき」
旧丸岡町の廃村豊原の、越前豊原三千坊古道を歩いたことがある。
快調に歩き最後の古道六本木坂を下り始めたときだった。 足を踏み入れることも出来ないくらい大きな杉の倒木が次から次へと行く手を阻んでいるではないか。 勇気を出して枝を払い大木越えを繰り返したが、不規則な足運びに足首を捻ってしまった。 痛みが酷く疲れが一気に襲ってきた。
杉枝の塊に横たわり考えた。 この足では進むことも退くことも無理だ。 山の日没は思いの外早い。 今日のことは誰にも話していない。 スマホは圏外になっている。 熊が出たらどうする。 心がふるえた。
そのときだった。
「ギェーギェー」と近くで鳥が叫び声をあげた。 全身に恐怖の血が駆け巡った。 たまらず、気力を振り絞り、来た道を引き返した。 足を引きずり、まさにやみくもだった。
車に戻ると恐る恐る振り返った。 豊原の森が静かにこちらを見下していた。
2025.11.21
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