2025.10.3の『日本経済新聞』の記事に驚いた。
「ナシの花粉、調達綱渡り」 「3割依存の中国産禁輸」 「国内増産や価格抑制が急務」
これらの見出しに目が点になってしまった。 えっ! まさか嘘だろう″
本文にナシの栽培の特殊性が書かれていた。 へえ〜 知らなかった″
――――――――――――――― ナシは同じ品種の花粉では実がつかず、生産する品種の樹木のめしべに別の品種の花粉をつける必要がある。 二十世紀梨なら幸水などの花粉を春に農家が授粉して夏〜秋に実をつける。 花粉の国内生産は7割で3割は輸入だった。 輸入のほぼ全量を依存していた中国で、2023年にバラ科植物に被害をもたらす「火傷病」がまん延したため、日本政府は中国産花粉の輸入を禁じた。 ―――――――――――――――
ナシの生産量が伸び悩んでいるらしい。 猛暑や生産者の減少に加え、花粉の輸入が急減したことが一因とのことだ。 授粉用の花粉を集めるには、身長より高い位置にある花を摘むことが多いそうだ。 花粉を一部または全量購入する農家は56%にも及ぶとのことだ。 生産者の高齢化が進む中、花粉を採取するより購入する農家が多いらしい。
――――――――――――――― 24〜25年は自治体や生産者が貯蔵していた花粉でかろうじて必要量を賄った。 貯蔵分は古くなれば品質が落ち、量にも限りがある。 農林水産省は、国内生産拡大に向けた補助金の給付や研究援助を強化した。 千葉県のJAいちかわは、1f分の農地を借りてナシの花粉専用圃場を開いた。 国産の花粉は1c約2000円と中国産の4倍もする。 国内の生産を拡大し花粉の価格を抑えることが、ナシの安定生産には欠かせない。 ―――――――――――――――
どうやら、われわれは身近なことにつき、知らないことが多すぎるようだ。 まさか、ナシが別の品種と受粉・授粉して実をつけるとは、思いもよらなかった。 しかも、その花粉が輸入品目だったなんて、夢にも思わなかった。
旧北國街道の加越国境を歩いていると、加賀梨の広大な畑が拡がって、春には白い花を一面に咲かせる。 旧芦原町にあるJA福井県のファーマーズマーケットには、この時期、地元で収穫された梨が所狭しと売られている。
これらを買った客は、二十世紀梨が幸水の花粉で実ったとは、中国の花粉で実ったとは、はたしてどれだけが知っているだろうか。 少なくとも私は学校で習ったことがないし、だれからも教えてもらっていない。 73歳の今日まで知らなかった。
稲作農家に生まれ育ちながら、令和のコメ騒動に直面するまで、まさか米不足だ、備蓄米だ、輸入米だ、増産だ、などと日本中が大きな波に翻弄されるなど思いもしなかった。
われわれは知らされてこなかったのだ。 教育の大きな欠陥だといえよう。 不安を煽ってはいけないが、現実を知らせることを怠ってはいけない。 問題提起をすれば、問題解決の必要性を意識して育っていく。 教育は人が生きて行くために必要だからなされるものだ。 人が安心してより良く生きて行くためのものだ。
あの世界の列強を相手にした戦争も教育があったからではないのか。 竹槍で敵を倒すと本気で教育していたのではないのか。 それで泣いたのは愚かな教育のせいではなかったのか。
幕末から明治維新を経てあっという間に近代国家を成し、世界を奇跡だと驚かせたのはわが日本国ではなかったのか。 それは教育の賜だったことを忘れてはいけない。
「へえ〜 知らなかった」などと言わせてはいけないのだ。
2025.10.10
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