■ 目の前にあることを一所懸命やる2025.9.16


「目の前にあることを一所懸命やることが大事だと思う」
俳優でミュージシャンでもある、六角精児の言葉である。

NHK/BS「六角精児の呑み鉄本線・日本旅」の中で言っていたと思うのだが、自信がない。
なかなかいい言葉なので、このエッセイに書こうと思ったが、これだけではネタとして物足りない。
そこで本棚にある六角精児の著書、「三角でもなく 四角でもなく 六角精児」(2012.12.10講談社)と「少し金を貸してくれないか」(2014.3.25講談社)を読み直してみた。

六角精児は、ちょっと意外過ぎる経歴の人である。
1962年兵庫県生まれ、学習院大学中退である。
10歳年下だ。

居酒屋で焼酎レモンに酔って大暴れして、出入り禁止になった。
パチンコ・競輪・競馬・麻雀などギャンブルにのめり込み、渋谷の「サラ金ビル」の全部の店で借金していた。
サラ金から借金を繰り返していた約十年間、思い出すのは同類の人間の切羽詰まったどす黒い顔と、夜通しの勝負で負けた時に見上げた、まっ黄色な太陽である。
月の半分以上は極貧生活で、家賃には到底手が回らない。
夜は電気を点けずに月明かりで生活、ガスはずっと止められたまま、水道は部屋の外にあるバルブを閉められる。
付き合っていたYちゃんのアパートで、ヒモのような生活をしており、毎月七万円もらっていた。
四度結婚しており、今の妻とはギャンブルが原因で離婚し二度目の結婚である。

壮絶な人生を送ってきたのだ。
それにしても酷いもんだ。
そんな生活を続けてきたドシブイ根性は、いつどうやって身につけたのか。
テレビで見せる陽気な人間ざまからは想像ができない。

だが、しかし、そんな男の言葉だからこそ説得力がある。
「目の前にあることを一所懸命やることが大事だと思う」

目の前にある修羅場を、数えきれないほど乗り切ってきたからこそ、さりげなく言えるのだろう。
修羅場を乗り切ってからは、舞台に、TVドラマに、映画に、「六角精児バンド」にと、大活躍している。

それにしても、BS/TV「六角精児の呑み鉄本線・日本旅」で披瀝する電車や鉄道の知識が半端でない。
なぜ鉄道好きになったのだろうか。
「六角精児バンド」として、ミュージシャンになったのはなぜだろうか。
その多才さに感心してしまう。
良くも悪くも「目の前にあることを一所懸命」やってきたからこそ、今の六角精児がある。

良くも悪くも「目の前にあること」から逃げないことが大事だと教えられた。

2025.9.16




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