■ 人は愚かな生き物2025.9.10


『日日是好日』
樹木希林・黒木華主演の映画である。
「毎日毎日こうして同じことができるってことが幸せなんだなあ」
「心より感謝しております」
すてきなセリフ=言葉である。

日日是好日、毎日が好い日。
来る日も来る日も楽しく平和なよい日が続くこと。
一日一日を大切に生きる心構えをいう。

平和な好日が毎日続いても、それが有難いとも、それこそが幸せとも思わない。
空気や水と同じで、日日是好日が当たり前と思っている。
だから、一日一日を大切に生きる心構え、などと考えたこともない。

人は何と愚かなのだろう。
いや待て、愚かだから生きていけるのかも知れない。

壊れた陶器は粘土捏ね直して元に戻すような訳にはいかない。
陶器が壊れてそのことに気付く。
夢で笑顔の親に出会いその愛の深さに気付く。
どんなに願っても亡くした親が帰ってくることはない。
彼女とは会えなくなって初めて好きだったということに気付く。
愛には距離感が必要、会えないから愛がつのる。

なぜ、陶器を大切に扱わなかったのだろう。
なぜ、親の言うことに素直になれなかったのだろう。
なぜ、彼女に優しくしてやれなかったのだろう。

人とは何と愚かな生き物だろう。
いや待て・・・
愚かだったからこそ、新しい陶器を手にして大切にすることができる。
愚かだったからこそ、持った子に精一杯愛をそそぐことができる。

『ドラえもん』で知られる藤子・F・不二雄に『分岐点』という短編がある。
好きで一緒になった妻M子との生活に疲れたサラーリマンが、黒メガネの不思議な男と出会った。
男は「やりなおしコンサルタント」を名乗り、過去にふみあやまったと思っている分岐点で人生をやりなおしさせるという。
「その道をまっすぐに どこまでも」と男に指さされ、気が付くと過去にふみあやまった分岐点のもう一方の生活があった。
そこには好きで一緒になった妻B子との生活に疲れた自分がいた。

愚かだったからこそ、一緒になった女(ひと)に優しくできる・・・と信じても、そんなことは夢物語だということを思い知る。

人は愚かな生き物でしかないのだ。

2025.9.10




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