扉付きの書棚の奥を探っていたら、LPレコードが出て来た。 何十年も聴くことなく蔵(しま)い忘れていた。 どれも十代二十代のころ買ったものばかりだ。 まだまだ持っていたが、人に貸して戻ってこなかったり、無頓着な兄が失くしてしまった。
小椋佳 7 はしだのりことシューベルツ 1 五つの赤い風船 1 及川恒平 1 サイモンとガーファンクル 1 かぐや姫 1 小柳ルミ子 5 三善英史 2 渚ゆう子 1 シモンズ 1 (※)数字はアルバム数なので枚数はこれより多くなる。
ジャケットを眺めていると、これらに夢中になっていた時代を思い出し、無性に聴きたくなった。 すると、その思いに応えるかのように、2025.8.23付『日本経済新聞』の土曜日版「NIKKIプラス1」に、レコードプレーヤーの紹介記事が写真入りで掲載されたのだ。 さっそく、手頃な価格のものを選びAmazonで購入した。
いちばん先に聴いたのは、小柳ルミ子の「京のにわか雨」だ。 この歌については、6月16日のエッセイに書いている。
「雨の季節になると口ずさむ歌がある。小柳ルミ子が次々とヒットを飛ばしていた1970年代、彼女が歌う『京のにわか雨』が好きだった」
「はるかなるこころのふるさと 京のにわか雨 小柳ルミ子」(1972)
ドキドキしてプレーヤーにセットしたレコード盤に針を置いた。 すると・・・あの懐かしいジャージャー″と針が盤の溝を擦(こす)る音がした。 MDでは味わうことの出来ないアナログの良さ、肌のぬくもり、生命感に溢れている。 そして、忘れることのないあの高い歌声が流れてきた。 雨だれが ひとつぶ頬に ・・・ ″ 最初のフレーズを聴いただけで、心が切なく、胸が締め付けられてしまった。
1970年代、まさに青春真っただ中だった。 嬉しかったこと。 悲しかったこと。 楽しかったこと。 腹立たしかったこと。 走馬灯のように頭の中を巡(めぐ)る。 蘇るあの日あの時に、目が涙でにじんでしまうのだった。
あの頃に帰ることは出来ないが、こうして心があの頃を旅することは出来る。 大切に蔵(しま)っておいてよかった。 宝物をまた一つ見つけた。
2025.9.5
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