■ 蘇る あの日 あの時2025.9.5


扉付きの書棚の奥を探っていたら、LPレコードが出て来た。
何十年も聴くことなく蔵(しま)い忘れていた。
どれも十代二十代のころ買ったものばかりだ。
まだまだ持っていたが、人に貸して戻ってこなかったり、無頓着な兄が失くしてしまった。

 小椋佳 7
 はしだのりことシューベルツ 1
 五つの赤い風船 1
 及川恒平 1
 サイモンとガーファンクル 1
 かぐや姫 1
 小柳ルミ子 5
 三善英史 2
 渚ゆう子 1
 シモンズ 1
 (※)数字はアルバム数なので枚数はこれより多くなる。

ジャケットを眺めていると、これらに夢中になっていた時代を思い出し、無性に聴きたくなった。
すると、その思いに応えるかのように、2025.8.23付『日本経済新聞』の土曜日版「NIKKIプラス1」に、レコードプレーヤーの紹介記事が写真入りで掲載されたのだ。
さっそく、手頃な価格のものを選びAmazonで購入した。

いちばん先に聴いたのは、小柳ルミ子の「京のにわか雨」だ。
この歌については、6月16日のエッセイに書いている。

「雨の季節になると口ずさむ歌がある。小柳ルミ子が次々とヒットを飛ばしていた1970年代、彼女が歌う『京のにわか雨』が好きだった」

「はるかなるこころのふるさと 京のにわか雨 小柳ルミ子」(1972)

ドキドキしてプレーヤーにセットしたレコード盤に針を置いた。
すると・・・あの懐かしいジャージャー″と針が盤の溝を擦(こす)る音がした。
MDでは味わうことの出来ないアナログの良さ、肌のぬくもり、生命感に溢れている。
そして、忘れることのないあの高い歌声が流れてきた。
雨だれが ひとつぶ頬に ・・・ ″
最初のフレーズを聴いただけで、心が切なく、胸が締め付けられてしまった。

1970年代、まさに青春真っただ中だった。
 嬉しかったこと。
 悲しかったこと。
 楽しかったこと。
 腹立たしかったこと。
走馬灯のように頭の中を巡(めぐ)る。
蘇るあの日あの時に、目が涙でにじんでしまうのだった。

あの頃に帰ることは出来ないが、こうして心があの頃を旅することは出来る。
大切に蔵(しま)っておいてよかった。
宝物をまた一つ見つけた。

2025.9.5




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