【ひとつめの些事】
昨日の8月30日、何気なく新聞折込チラシをながめていた。 すると近所のBスーパーの安売りに、目が釘付けになってしまった。 ――――――――――――――― 「8月30日[土]限り ※なくなり次第終了します。」 「ネスレ日本 ゴールドブレンド 80g 1本458円(税抜)〈参考税込価格495円〉お1人様2本まで」 ――――――――――――――― 時々飲んでいるインスタントコーヒーだ。 これはメチャクチャ安い! チラシをポケットに入れ、朝9時の開店を待って、張り切ってスーパーへと駆けつけた。
売り場の棚に商品を見つけると、プライスカードには特売の表示はなく、「848円(税別)」とあるではないか。 特売の商品はどこか別の特設コーナーに置いてあるのか″と思い、店内をあちこち見て回った。
ところが、どこにも特設コーナーなどない。 店員さんに訊ねようと思いキョロキョロするが見当たらない。 そこで商品を持ってレジに向かった。
レジの若い女性店員にチラシを見せ事情を話すと、親切に対応してくれた。 「それじゃレジを通してみますね」 やはり458円ではなく848円と表示されてしまう。 彼女は傍のマイクで店長を呼び出してくれた。 急ぎ足でやってきた店長はチラシを一目見ると言った。 「これはうちの店のチラシではないです。Vスーパーのものです」 これには驚き 桃の木 山椒の木″だった。
「ありゃ! まぁ〜」 おもわず叫んでしまった。 店長はしらけた視線を送ってくるし、彼女は呆れた顔をする。 棒立ちしていると、笑顔になった彼女が助けてくれた。 「この商品こちらで棚に戻しておきますね」
【ふたつめの些事】
夕方早めにお風呂に入っていると、近くでリーン リーン″と鳴く虫の声が聞こえてきた。 いつ終わるかと思う連日の猛暑だけど、虫には忘れずに秋が訪れているんだなあ〜と微笑ましく思った。
ところが、てっきり鈴虫だと思ったものの、なんだか違和感がある。 鈴虫はそれこそ涼やかに澄んだ声でリーン リーン″とリズミカルに鳴く。 ところがいま聞こえるのは確かにリーン リーン″と鳴いているが、心持ち重く間延びがして、涼やかさが感じられないのだ。
鈴虫以外の虫の音ではと考えたが、そんな虫がいることは聞いたことがない。 どうにも納得がいかず虫の音に耳を傾けていると、長風呂になってしまった。
風呂上がりのビールをグォク! グォク! プッファーーー″と呑みながら考えた。 おそらくあの虫は鈴虫だけど余りの猛暑に夏バテして、鳴き声までもが夏バテバージョンになってしまったのだと。
(!)「些事」とは「小さな つまらないこと」をいう。(三省堂国語辞典・第四版)
2025.8.31
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