6月は上場企業の株主総会が集中する。 昔は暴力団まがいの「総会屋」が恐れられたが、いまは「物言う株主(アクティビスト)」が恐れられているという。 ところが、最高意思決定機関である株主総会の形骸化は、相変わらずのことらしい。
そんな中で、フジTVを傘下にするフジ・メディア・ホールディングスの株主総会が25日に開かれ、日枝久取締役相談役が退任した。 中居正広の女子アナに対する性暴力事件″で経営が混乱したが、その要因として日枝氏が40年にわたり築き上げた会社風土が大きな問題とされた。 フジTVに与えたダメージは大きなものとなったが、退職金が支給されることが決まった。
日枝氏は事件後公式の場で語ることはなく、長い在任が企業統治上の問題になる″との共同通信の取材にも「そうなのですか? 知りません」とかわした。 新たに社長となった清水賢治氏の「何かしらコメントを出すべきだろうと思う」の声にも応じることはしなかった。
日枝氏は4つの系列局や産経新聞社などフジサンケイグループの取締役も退いたが、日本美術協会会長や彫刻の森芸術文化財団理事長などの役職が続くらしい。 87歳にもなった自身を顧みて、これらの職を潔くよく退いたらどうだろうか。
私は2年間の会社員経験がある。 総務部経理課だった。 その会社でも5月の株主総会が近づくと、担当部署の総務部は慌ただしくなった。 特に総務部長はその責任者として緊張を強いられていた。 総会では専務が議長となり、議案説明と答弁にあたることになるが、部長がその原稿づくりに苦闘する姿を見ると、われわれ平(ひら)まで気が重くなったものだ。
総会当日には、当時のことだからテープレコーダーを何台も準備した。 総務部長は早くから受付近くにいて、うるさそうな株主を見つけると受付する前に、コーヒーチケットを渡すなどして対応していた。 事前にどんな株主が出席するか、その情報集めも部長の大きな仕事になっていたのだ。 うるさい質問などなく、いかに早く型通りに終わらせる″かが部長の腕の見せどころといえた。 そんな部長を見ていると可哀そうなくらいだった。
そして無事終えたときの安堵した顔は、入社以来一番いい表情だった。 その日打ち上げの飲み会に誘われたかどうかは覚えていない。 おそらく課長以上で盛り上がったのだろうと思う。
2025.6.28
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