6月8日『日本経済新聞』の「直言Think with NIKKEI」を読んで、小泉進次郎農林水産大臣の政治家としてのあり方に胸がすく思いがした。
「今の農政の結果責任は政治にもある」 小泉農相が日本経済新聞の取材にきっぱりと言い切った。 政治家としてその責任をこれほど明確に発言した。 果して現役はもとより過去にいただろうか。 すごいことだと思う。
「コメは売るほどある発言」の江藤拓元農相は、小泉農相のこの言葉にどう感じたであろうか。 「ひめゆりの塔侮辱事件」の西田昌司参院議員は、小泉農相のこの潔い発言をどう受け止めただろうか。 是非、彼らの弁を聞いてみたいものだ。
この度の「コメ騒動」について、5月28日のエッセイで次のように書いた。 「農政が悪いのか、米流通業者が悪いのか、それとも消費者が悪いのか」 その疑問に小泉農相はズバリ答えてくれた。 小泉農相は日本経済新聞の取材に、官僚が準備した想定問答の紙を一度も見ることなく「自分の言葉」でよどみなく発信したという。 江藤元農相や西田参院議員には、到底真似のできない能力だろう。
取材内容のポイントは次のようである。 なぜコメ騒動が起きたのかが理解できるし、この先どうすればいいのかが見えてくる。 これによれば、小泉農相に大いに期待しないではいられなくなる。 さらに農相の次は、国政のリーダーたる小泉進次郎としての手腕を発揮してもらいたいものだ。
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競争入札では店頭に安いコメを速く届けられない。 だから随意契約に変えなければならなかった。 店頭販売が5月31日になったが、民間のスピードの競争力はすごい。
価格高騰の要因は、2024年の南海トラフ地震臨時情報で、消費者マインドに変化が生まれた。 店頭の棚が空いたのを見てコメ不足が不安になり、『少し買っておこう』と行動変容した。 流通段階で今までの量が入らなくなり、不足感の連鎖がコメ全体の市場に大きな影響を与えた。
コメの生産量は増えたが、JA全農など集荷業者への流通が減って、スポット取引への流れが強まり、店頭価格を引き上げた。 この流通の世界で何が起きているかは、農林水産省でも見えていない。 既存の集荷や大手卸からコメ流通のすべてを見える化しなくてはいけない。 コメ流通は複雑怪奇、ブラックボックスだが、それを特定し課題解決の政策を考えていく。
備蓄米を全部使い切っても、関税ゼロで輸入するミニマムアクセス米が活用できる。 備蓄米で不安視されるのは災害時の放出量だが、東日本大震災で4万トン、熊本地震で90トン、過度な不安を起こすことなく対応できる。
15年から2年間、自民党農林部会長を務めたが、その経験がなければ、今回の随意契約による備蓄米放出と早期の店頭販売は実現できなかった。 これまで自民党と農協がお互い持ちつ持たれつでやってきたのは間違いない。 今の農政の結果責任は政治にもある。
農相になる時に森山裕幹事長に『いま必要なのは組織・団体に忖度しない判断だ』と話した。 私はその通りの判断を続けている。
農業従事者もちゃんと価格転嫁ができて、賃金に反映されるサイクルを実現したい。 日本は人口減少で需要が減るので世界のマーケットをとっていく。 JAグループの輸出は380億円で小さすぎる、付加価値をつけて3〜5倍にできる。 そのために金融機関や商社など経済界の協力をいただきたい。
農家が求めるのは高い資材を売りつけないこと、市場開拓に汗をかいてくれることだ。 農協だからといって特別扱いせず、農家が必要だというプレーヤーを徹底的に応援したい。
すでにコメ増産の目標を立てているが、生産を増やして余ったら国が面倒をというのは間違いだ。 需要に応じた生産が大事で、市場動向を見ずにつくることはない。
農地の集約、大区画化を進めるには今までとは次元の違う支援措置をしないとスピード感をもって対応できない。 コメの分野の改革をしっかりと進めることが、結果として農政全体の改革につながるから、コメに集中して取り組むことが必要だ。
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2025.6.11
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