漫画家黒鉄(くろがね)ヒロシのエッセイ集、『まいにちクローガネ』(角川文庫)に抱腹絶倒したことは、既に書いた。 ところが、こんなに面白いものを自分だけ楽しんでいるには勿体ない、と思うようになった。 と言うよりも、ここに取り上げることが止められなくなってしまった。 黒鉄の魔力に嵌(は)まってしまったようだ。
12・15・16日に引き続き、今回は『まいにちクローガネ』第4弾と題して、「冷やしライオン」と「ジャム」を紹介しよう。 さあ、笑ってください。
「冷やしライオン」
たぬきうどんや、きつねうどんはあってもライオンうどんはない。 ライオンだけではない。 ゴリラはどうした。 トラ、うさぎは、カバは、ワニは。 そば屋ではどういうわけかタヌキとキツネだけが大きな顔をしている。 あとガンバッテルのはオカメぐらいのものである。 アシスタントのH君がいう。 「でも猿はありますからね。ザルソバ」 少し苦しいが、ま、認めよう。 「カバは、うなぎ屋にありますからね。カバ焼き」 じゃワニは、ライオンは。 「ワニはカバン屋にあって、ライオンは歯みがきにあります」 ボクはそば屋の話をしておるのだ。 そんなにあっちこっちに所在を飛ばすぐらいならこんなに苦慮したりはせぬ。 最初から全部動物園にそろっておるのだ。
「ジャム」
ある方から、軽井沢のジャムをいただいたことがある。 「軽井沢のジャムですの」 「ハァ、そりゃどうも・・・・・・」 「やっぱし、軽井沢は、ようございました」 「ホォ、そうですか・・・・・・」 「ジャムも、美味しいんですよ、この軽井沢の・・・・・・」 やたらと、軽井沢を連発しながら、ジャムをもらったのだが、しばらくは、「軽井沢」がこびりついて離れなかった。 そこで、これはお返しすべきなので、近所でパンを買ってきて、お届けした。 「目黒のパンですが」 以後、この方とは、疎遠になってしまった。
◆どうだろうか。 黒鉄は何でもないことを、これでもかとユーモアと皮肉を込めて、さりげなく書いてしまう。 ギャグ漫画家という職業柄だとは思うものの、プロのその鋭い視点と捉え方に、脱帽してしまう。
◆蛇足ながら申し上げたい。 私は書くことを生活のリズムとしているが、書いても、書いても、このようなエッセイをものにしたことがない。 「そのうちに・・・・・・」と思う余裕がある歳ではないことは、よく分かっている。 だが、しかし、今日も飽きずにヘタなモノを書いている。 バカは死ななきゃ治らない・・・・・・。
2026.1.17
|