■ 「男と女 恋愛の落とし前」E〜F2026.2.10


「唯川恵『男と女 恋愛の落とし前』新潮新書」

著者は女性であり、同じ12名の女性への取材を通して、この本を著(あらわ)している。
男性には取材していないが、結婚したのが40代後半で71歳という年齢、すなわち豊富な経験がその背景にある。
したがって、男の私が読んでいても違和感はないし、説得力がある。

今回は引き続き、第6話と第7話について書こう。

第6話
恋に伴うのは情熱、愛が背負うのは忍耐
――長い不倫の末に現実に気づいた43歳

嘉穂さんは43歳、特許事務所に勤め、強い結婚願望がないまま、気が付いたら今も独身である。
恋愛の始まりはさまざま、電話の声にときめいたとか、無骨な手に釘付けになったとか。
恋とは、自分の中に眠っていた甘やかな感覚を呼び覚まされることだ。
そんな思いを持った自分に驚き、そんな思いを持たせた相手を特別な人だと感じてしまう。
恋に伴うのは情熱だが、愛が背負わなければならないのは忍耐である。
結局、惚れた方が負けなのだ。
愛はさまざまな側面を持っている。
時に執着が、意地が、女のプライドが、ここで別れたらすべての時間が無駄になってしまう。
男には意地という名の未練が残り、女には愛の残像としての情が残る。
恋愛の価値は別れ方で決まる。
彼女を責めるつもりはない。
どんな恋愛も、別れの理由はひとつに行き着く、気持ちが離れた、それだけである。
彼女は、彼と別れて落とし前をつけたと思っているかもしれないが、彼の妻にしたらこれからが始まりなのである。

<神尾>
これは恋愛の本質を、ズバリ言い当てている・・・・・・と思う。
ただただ、首が痛くなるほど頷(うなず)きながら一気に読んでしまった。
余計なコメントなどしては野暮というものだ。

第7話
彼女を救ったのは自分の城だった
――男を信じられなくなった36歳

「今住んでいるところが、まさに自分の城なんです」
由美さんは、大手通販会社に勤務する36歳、独身である。
「婚約した彼に好きな女ができ、式の5か月前に破棄されました」
メンタルをやられて心療内科に通い始めた。
「強くなるために環境を変えたいと思い、相手からの迷惑料100万円と慰謝料150万円に、親の援助200万円と自分の預金250万円を頭金に、マンションを購入したんです」
「自分の城を手に入れ、生活の基盤が出来、気持ちが安定し、仕事への意識も変わりました。最近、資格を取ろうと勉強も始めているんです」
恋愛は、時に人生を覆してしまうほど深い傷跡を残す。
とはいえ、恋愛そのものを見限り、背を向けてしまうのは寂し過ぎる。
恋愛は、成功と失敗があるんじゃない。
成功と教訓があるだけだ。

<神尾>
由美さんが、心療内科に通うほどダメージを受けたにも拘らず、自分の城=マンションを得たことで立ち直ったことに、大きな拍手を送りたい。
これと、とてもよく似たケースを知っている。
結婚したものの、夫の将来に不安を抱いた女性が離婚した。
そして、資格を取得しそれを活かした仕事に就き、やがてマンション=自分の城まで購入した。
「もう結婚はこりごり、ひとりが最高」と言ってはばからない。
前向きに自分の人生に向きあっている彼女にエールを送りたい。
自分の城を築いた彼女たちは、決して恋愛や結婚に失敗した訳ではない。
それらを教訓に、自らの人生を切り拓いたのだ。
その賢明さと強さに敬意を表したい。

2026.2.10




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