昨日書いたカフェの他に、もう一つ、今年になって気に入ったところがある。 蕎麦屋だ。 旧芦原町の国道305号線沿い、JAが経営するファーマーズマーケットに連なってある。
週に1度は、お昼にこの蕎麦屋で食べている。 福井の県民食ともいえる「おろし蕎麦とミニソースかつ丼セット¥1,150」に決めている。 安くて旨いのだ。
不思議なことに、中に入ると左側がパン屋になっている。 表には蕎麦屋の表示はあるが、パン屋のことはどこにも掲示がない。 売り場にはパン屋の店名があり、レジは蕎麦屋と別だ。 経営が別なのに、珍しいケースといえる。
初めてこの蕎麦屋に入ったのは、7月に入ってからだったと思う。 自販機で食券を求め、カウンター越しに調理場の女性に渡し、空いた席を探すのだが満席だった。 「そちらの席に座っていただいていいですよ」 その女性が指を差して教えてくれた。 ありがたいことに、パン屋のスペースの窓際に、低いカウンター席が設けられていたのだ。 どうやらパンを買った客は、持ち帰るばかりで、ここで食べることはしないのだろう。
カウンターに腰掛けると、制服を着たパン屋の女性店員がやってきた。 「ここは陽射しが強いので下げますね。」 笑顔でブラインドを下ろしてくれた。 その仕草がテキパキとして眩しかった。 「すいません。どうもありがとう」 お礼の言葉が素直に口から出た。
この蕎麦屋の「おろし蕎麦とミニソースかつ丼セット」は、思いの外旨いので驚いた。 「蕎麦は福井産十割」との貼り紙がある。 名に違(たが)わず、太くて黒い武骨な手打ち蕎麦が、辛味大根のだし汁とネギと削り節と絶妙のハーモニーを奏でてくれる。 子供の頃、母が手打ちしてくれた蕎麦を思い出した。
かつ丼のとんかつは厚切りだが、ヒレ肉なので脂がなく軟らかい。 ソースは甘辛さが程よくとんかつによく合う。 この蕎麦屋が大いに気に入ってしまった。
それ以来、この蕎麦屋でのお昼が楽しみになった。 座るのは、調理場に向かった4つしかない、高いカウンター席に決めている。 他の客と目を合わせるのが嫌で、この方が気楽でいいのだ。
食券同様に水も給水器から自分で入れて、食べ終われば奥にある洗い場のカウンター口に、食器を返すシステムになっている。 すべてセルフというのも、余計な気遣いをしなくて済むのが気に入っている。
2025.12.11
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