「唯川恵『男と女 恋愛の落とし前』新潮新書」
著者は女性であり、同じ12名の女性への取材を通して、この本を著(あらわ)している。 男性には取材していないが、結婚したのが40代後半で71歳という年齢、すなわち豊富な経験がその背景にある。 したがって、男の私が読んでいても違和感はないし、説得力がある。
今回は引き続き、第6話と第7話について書こう。
第6話 恋に伴うのは情熱、愛が背負うのは忍耐 ――長い不倫の末に現実に気づいた43歳
嘉穂さんは43歳、特許事務所に勤め、強い結婚願望がないまま、気が付いたら今も独身である。 恋愛の始まりはさまざま、電話の声にときめいたとか、無骨な手に釘付けになったとか。 恋とは、自分の中に眠っていた甘やかな感覚を呼び覚まされることだ。 そんな思いを持った自分に驚き、そんな思いを持たせた相手を特別な人だと感じてしまう。 恋に伴うのは情熱だが、愛が背負わなければならないのは忍耐である。 結局、惚れた方が負けなのだ。 愛はさまざまな側面を持っている。 時に執着が、意地が、女のプライドが、ここで別れたらすべての時間が無駄になってしまう。 男には意地という名の未練が残り、女には愛の残像としての情が残る。 恋愛の価値は別れ方で決まる。 彼女を責めるつもりはない。 どんな恋愛も、別れの理由はひとつに行き着く、気持ちが離れた、それだけである。 彼女は、彼と別れて落とし前をつけたと思っているかもしれないが、彼の妻にしたらこれからが始まりなのである。
<神尾> これは恋愛の本質を、ズバリ言い当てている・・・・・・と思う。 ただただ、首が痛くなるほど頷(うなず)きながら一気に読んでしまった。 余計なコメントなどしては野暮というものだ。
第7話 彼女を救ったのは自分の城だった ――男を信じられなくなった36歳
「今住んでいるところが、まさに自分の城なんです」 由美さんは、大手通販会社に勤務する36歳、独身である。 「婚約した彼に好きな女ができ、式の5か月前に破棄されました」 メンタルをやられて心療内科に通い始めた。 「強くなるために環境を変えたいと思い、相手からの迷惑料100万円と慰謝料150万円に、親の援助200万円と自分の預金250万円を頭金に、マンションを購入したんです」 「自分の城を手に入れ、生活の基盤が出来、気持ちが安定し、仕事への意識も変わりました。最近、資格を取ろうと勉強も始めているんです」 恋愛は、時に人生を覆してしまうほど深い傷跡を残す。 とはいえ、恋愛そのものを見限り、背を向けてしまうのは寂し過ぎる。 恋愛は、成功と失敗があるんじゃない。 成功と教訓があるだけだ。
<神尾> 由美さんが、心療内科に通うほどダメージを受けたにも拘らず、自分の城=マンションを得たことで立ち直ったことに、大きな拍手を送りたい。 これと、とてもよく似たケースを知っている。 結婚したものの、夫の将来に不安を抱いた女性が離婚した。 そして、資格を取得しそれを活かした仕事に就き、やがてマンション=自分の城まで購入した。 「もう結婚はこりごり、ひとりが最高」と言ってはばからない。 前向きに自分の人生に向きあっている彼女にエールを送りたい。 自分の城を築いた彼女たちは、決して恋愛や結婚に失敗した訳ではない。 それらを教訓に、自らの人生を切り拓いたのだ。 その賢明さと強さに敬意を表したい。
2026.2.10
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