月刊誌『PHP』の裏表紙のコラムを、今回も是非紹介したいと思う。 2015年8月号のものだ。 なぜ10年も前のこの号にしたのか。 コラムが良かったのはもちろんだが、最終ページの「メモ帳」欄が嬉しかったからだ。
★福井を訪ねました。 名物にうまいものなしというけれど、ここのソースかつ丼は◎。 日本一幸福な県にふさわしい!? 食は幸福の大事な要素ですね。 福井へ行かれたら、あなたもぜひ!(泰)
(神尾) 福井のことを褒められると素直に嬉しいものだ。 福井のソースかつ丼は、長野や群馬と並んで全国的に有名になってきた。 他県から福井を訪れた人から、「福井は何を食べてもおいしいですね」と云われたことが何度もある。 逆に自分が県外へ行ったとき、食の不味さにがっかりしたことが一度や二度でない。 だから福井へ帰ってくると、おろしそばと刺身が食べたくなる。 もちろん、ソースかつ丼も忘れない。
「遠回り」
学窓を離れて数年。 将来の夢を語りあった友人に久しぶりに会うと、着々と自らの道を歩み、成長している姿がまぶしく見える。 それに比べて自分ひとり後れをとり、取り残されたようにも感じられてくる。
夢や目標に向かって懸命に頑張っていても、なかなか芽が出ず、成果があがらない。 そんなとき、誰しも、こんなことをしていていいのか、もしかするとこれまでの努力、経験は無駄だったのではないか、余計な遠回りをしているのではないかという不安や焦りに駆られるものである。
だが、無駄なこと、意味のないことなど一つもない。 自分にとって、それらはすべて必要なことなのである。 夢を将来現実のものにするための、どうしても通らなくてはならない道のりなのである。 振り返ってみて、あのときの努力や経験があってこそ、今の自分があるのだとわかる日が、きっと来るにちがいない。
遠回りに思える道が、結局は一番の近道になる。 安心しつつ、もう少し頑張っておけばよかった″という悔いだけは残さぬよう、一歩一歩、なすべきことをなし続けていきたい。
(神尾) 親の縁故で入った会社が嫌で仕方がなかった。 元気でやっている友人に会うと、羨ましく妬ましく思ったものである。 そんな自分が情けなくて仕方がなかった。
これではいけないと思えば思うほど、自分が惨めで自己嫌悪に苛(さいな)まれた。 だからといって、取りあえず何をどうすればいいのかが分からず、焦躁感に駆られるだけだった。 挙句の果てに、付き合っていた女性が去って行ってしまった。 こんなとき男は酒に逃げる。 自分も毎日酒を飲み、かつ、愚痴った。
会社が嫌で、彼女が去り、自己嫌悪になれば、自分には何も残らない。 初めて人生を真剣に考えた。 白紙の自分に何が出来るかを考えた。 「税理士になろう」と決めた。 目指す目標があるということは、自分を勇気づけてくれる。 初めて本気で勉強した。
会社に勤めたことも、彼女と付き合ったことも、自分を嫌いになったことも、決して無駄ではなかったと思う。 そんなことがあったからこそ今の自分がある。 振り返ってみれば、あのとき目標を見つけ、前を向くことが出来て本当に良かった。 遠回りをしたけれど、それがあったからこそ、今こうして豊かな心でいることができる。 決して悔いはない。
内面生活さえ豊かならば人は幸福でいられる。 老いもひとりも恐れることはない。
2025.11.20
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